勉強

キャッセル病院における入院精神療法

引き続き、児童青年心理療法ハンドブックから入院治療に関する論文を読みました。

Flynn, D. (2009). The chalenges of in-patient work in a therapeutic community. Eds. Monica, L. and Horne, A. The Handbook of Child and Adolescent Psychotherapy: Psychoanalytic Approaches, Second Edition. East Sussex; Routledge, pp.101-113. (平井正三・脇谷順子・鵜飼奈津子(監訳)(2013) 治療共同体における入院治療の試み 児童青年心理療法ハンドブック 創元社)

キャッセル病院は第一次世界大戦後に砲撃ショック(戦闘体験によるPTSDのこと)に似た症状に苦しむ市民のために設立された。治療は個人や集団は自由と責任を与えられれば、その責任を果たし人としての目的を持ち以前に苦しんだ問題に対しても立ち向かうことができるようになるという考えのもと行われた。治療方法として入院治療が発達すると、家族関係や心理的な問題に対しても用いられるようになった。 続きを読む

友人の自死を経験した青年の外傷性悲嘆

友人の自死を経験した青年の外傷性悲嘆に関する研究論文を読みました。外傷性悲嘆とは、トラウマ的な出来事によって生じる正常範囲を超えた悲嘆のことです。

Melhem, N. M, Nancy D., Shear, M. K., Day, R., Reynolds Ⅲ, C. F., and Brent, D.(2004) Traumatic Grief Among Adolescents Exposed to a Peer’s Suicide. American Journal of Psychiatry, 161, 1411-1416.

近年、死別を経験した成人が外傷性悲嘆(Traumatic Grief)によって心身の健康に長期に渡り影響を受けるという理解が広まってきた。外傷性悲嘆は抑うつや不安と異なるもので、機能不全の憎悪、身体的健康の悪化、希死念慮の上昇を生じさせる。しかし、これまでの悲嘆研究の多くは配偶者を亡くした成人が対象で、子どもの実証的なデータは非常に少なかった。友人や兄妹を自死で失った青少年の悲嘆に対する縦断的研究では、抑うつ、不安、PTSDの罹患率の上昇が見られた。また、自死から6年後に自死者の友人に行った調査では、希死念慮を伴う外傷性悲嘆を発症するケースが見つかっている。

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イギリスでの多職種協働チームにおける児童心理療法士の役割

イギリスでは児童精神医学の他職種協働チームで心理職がどのような役割を担っているかを紹介する論文を読みました。日本語タイトルでは省かれていますが、精神分析の伝統を主に扱っています。

Crockatt, G. (2009). The child psychotherapist in the multi-disciplinary team. Eds. Monica, L. and Horne, A. The Handbook of Child and Adolescent Psychotherapy: Psychoanalytic Approaches, Second Edition. East Sussex; Routledge, pp.101-113. (平井正三・脇谷順子・鵜飼奈津子(監訳)(2013) 多職種協働チームにおける児童心理療法士 児童青年心理療法ハンドブック 創元社)

児童心理療法における理論的発達は、子どもの発達に対する考え方や困難が生じたときに必要な介入、また子どもを身体・心理・社会的な側面を含む全体像として捉えることの必要性を明らかにした。これを受け、専門家による多職種協働チームが問題をアセスメントし対処することや、問題に包括的に対処するためには他機関システムが必要であると考えられるようになった。

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遊戯療法の前意識的交流におけるセラピストの役割

弘中正美. (2012). 前概念的レベルにおけるコミュニケーションー遊戯療法・箱庭療法などにおける治療メカニズムについてー. 明治大学心理社会学研究. 8, 35-46.

遊戯療法や箱庭療法において非言語的洞察がないにも関わらず治癒的な働きが生じるのは、それらにおいてはイメージ表現が意識と無意識の中間にある前意識を活性化させるからである。前意識の領域において生じる言葉にしにくいが本質的な体験を前概念的体験と呼ぶ。この前意識的体験には問題の解決を方向性を暗黙裡に示されており、触れているだけでも治癒的な働きが生じるのである(弘中, 1995)。 続きを読む

非言語的表現による治療的変容の機序

弘中正美. (1995). 表現することと心理的治癒. 千葉大学教育学部研究紀要. I, 教育科学編, 43, 55–65. Retrieved from http://ci.nii.ac.jp/naid/110004715487/

フロイトによれば、心理療法における治癒は無意識的なものを意識化することによってもたらされる。フロイトの局所論では心を階層的に意識、前意識、無意識の三つに分ける。無意識は心の深層にあり直接触れることのできない。そのため意識と無意識が交流する前意識を通して、そこに立ち現れてきた無意識を明確な形で言語化(=洞察)するのである。 続きを読む