意識と無意識の統合としての人格の発展/ドラ・M・カルフ『カルフ箱庭療法』

ドラ・M・カルフ(1972)カルフ箱庭療法[新版] p.1-40 誠信書房.

創始者カルフによる箱庭療法の解説書です。箱庭療法は子どものための精神的な治療方法として考案されました。箱庭とは、砂を入れた木製の四角い箱のことです。箱の底は水を象徴する水色に塗られており、傍らには人間、動物、植物、建造物といった様々なミニチュアが用意されています。子どもは砂とミニチュアを自由に使って、なんらかの風景を作っていくことになります。

箱庭療法は、人は生まれた瞬間から意識と無意識を統合する全体性に向かって成長を続けるという人間観に基づいています。こうした発展のことをユングは「人格中心化」と呼びました。子どもは母親から暖かい愛情を受けることで、まだ未熟な精神を自由かつ安全に精神的な発達させていくことができるようになります。ところが、こうした環境はいつでも得られるものではありません。冷たく疎遠な家庭環境や戦争や貧困は子どもを不安定で危険な状況に追い込み、自我は十分な発達を困難にするのです。

子どもが育つ過程で得られなかった自由で安全な環境を与え、再び子どもの自我の発達を促進しようというのが箱庭療法です。子どもは治療者と暖かい関係を築くことで自分が受け入れられ守られている感覚を持ち、箱庭という自由かつ保護された空間で自分の精神を形にしていくことが可能になるのです。

さらに箱庭療法では、その象徴性が重要な意味を持っています。意識と無意識は現実世界では対立しやすく統合は困難です。しかし、箱庭では無意識を風景として象徴化することで、意識との統合を容易にします。また、子どもの精神的状態もこうした象徴表現から見出すことができます。ユングによれば、円は完全性の象徴ですが、箱庭でも精神が全体性を獲得していくと円形が表出してくるのです。

松下 弓月

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松下弓月(まつしたゆづき)。たい焼きと映画とコーヒーと。最近は餃子が盛り上がっています。

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