デヴィッド・リンチの創作法と瞑想の関係

Lynch, D. (2006). Catching the Big Fish: Meditation, Consciousness, and Creativity (pp. 1-81). New York: Tarcher.

映画監督のデヴィッド・リンチが瞑想と彼の想像力の源泉の関係について書いた本を読んでいます。非常に独特な作品を作る方ですが、その創作方法も実に独特です。

リンチは創作のアイデアとは魚のようなものだと言います。小さな魚を捕るには浅瀬で良いが、大きな魚を捕るには深いところまでもぐらなくてはならない。そのための方法が瞑想です。

最初に聞いたときはまったく興味がなかったというリンチが、はじめて瞑想をしたのは1973年の7月のこと。「真の幸福はあなたの内にある」という言葉に興味を持ち、すでに瞑想していた姉の薦めでロスの超越瞑想センターを訪れました。ドリス・デイ似のインストラクターに教えられ瞑想を始めたところ、一気に深いところへ降りていき、あっという間に20分が経っていたそうです。彼にとって、瞑想は「純粋な意識、純粋な認識の海」へ到達し「本物の幸福感」を得る経験でした。それから33年間、毎日朝晩2回、20分の瞑想を行っているそうです。

さて、この瞑想時の意識の深いところへ行った経験から、偶然や無意識から生じてきたような些細な出来事を活かすという創作スタイルが生まれます。テレビドラマの『ツイン・ピークス』で、非常に印象的だった赤いカーテンの部屋のシーンのアイデアはこんな風に生まれたそうです。

“ある夏の日、私はロサンゼルスにある映画産業連合会のラボにいた。私たちは『ツイン・ピークス』のパイロット版の編集をしていて、その日の仕事が終わったばかりだった。夜の六時半頃に私たちはラボを出た。駐車場には何台も車が停まっていた。そのうちの一台の屋根に手をかけて寄りかかったところ、ものすごく暖かかった。熱いというのではなく、いい感じに暖かかった。そのまま寄りかかっていたら、音のもなくあの赤い部屋のことが浮かんできた。それからあの逆回転のことや、会話のいくつかも浮かんできた。”

ここから、「壁は赤いが硬い壁ではない」、とか。「カーテンはあるが、不透明ではなくて、透き通っている」のようにこの要素を、最初のアイデアに戻りつつふくらませていくという手法でシーン全体を構成していったのだそうです。

松下 弓月

About The Author

松下弓月(まつしたゆづき)。たい焼きと映画とコーヒーと。最近は餃子が盛り上がっています。

No Comments

Leave A Reply

You must be logged in to post a comment.