パーソナリティの変化を測定する/Carl R. Rogers “Personality Change in Psychotherapy”

41NGeLbPxlL._SL160_

Rogers, C. R. (1961) “Personality Change in Psychotherapy” On Becoming A Person. London: Constable & Robinson, pp. 225-242.

カール・ロジャーズのOn Becoming A Personに収録されている、心理療法におけるパーソナリティ変容に関する論文を読みました。

当時はまだカウンセリングの効果を証明するような研究はほとんど行われておらず、心理学者からもその有効性を疑問視する声があがっていたそうです。ロジャーズは「心理療法が役に立つという証拠はなにもない」と語ったヘッブ、そして「フロイト派だろうがなんだろうが、データは心理療法が神経症患者の回復を助けになると証明しなかった」と語ったアイゼンクの言葉を引用し、この論文で反論を試みています。

心理療法の価値を証明するためにロジャーズたちが行ったのは、客観的な科学的方法によってカウンセリングの効果を測定することでした。

その客観的で科学的な研究方法の特色としてロジャーズが挙げているのは、三つのことです。一つ目は、カウンセリングの評価を「成功/不成功」や「治癒した/治癒しなかった」という単一の基準で測るのを止め、変化をより詳しく測ることのできる複数の評価基準を用いること。二つ目は、客観的な証拠を得られるように、研究者の主観の影響を排除できる研究方法を用いること。三つ目は、パーソナリティにおける変化を測定したことです。

さて、パーソナリティの変化は、いったいどんな方法で測定することができるのでしょうか。ロジャーズたちはクライアントの自己認識の変化に注目しました。

まず、カウンセリングの面接記録などから、「わたしは従順な人間です」、「人にどう思われるのか怖い」といった自己描写的な発言を抜き出し、100枚のカードにまとめます。このカードをクライアントに渡し、「今の自分」にぴったり合う言葉から、まったく合わない言葉まで、9つの山に分けさせます。さらに、カウンセリングを始める前、始めてしばらくしてから、カウンセリング終了後など、複数回に渡ってこのテストを実施します。

どんな風に自分のことを見て、どんな言葉で自分のことを表現するのかは、人によって異なり、同じ人でも時と場合で変化してしまいます。このあやふやな自己認識の表現というものを、ロジャーズたちはカードに記された言葉を選ぶという行為に置き換えることで、共通の基準に則った比較可能なものに変換しようと試みています。それぞれの時点で選んだカードの組み合わせを比較することで、パーソナリティの変化も数値に置き換えることが可能としたのです。

こうして得たデータの分析によって、「セラピーによってクライアントはより肯定的な自己認識を持つようになる」、「セラピーによって、クライアントの自我はより適応的になる」、「クライアント中心療法では、自分自身でいることを可能にするカウンセラーとクライアントの関係が、それまで否定し抑圧していた感情や経験を認め自己に統合することを可能にする」といった仮説を証明することができました。

この論文の結論部分で、ロジャーズは厳格な科学的研究の基準を満たした、心理療法の効果の証拠が得られたと述べています。

ここまで解説した研究によって、心理療法がパーソナリティと行動の変化を生じさせるという点に関して、厳格な科学的研究で通常求められる水準を満たした客観的な証拠を得ることが可能であることが非常にはっきりしたと思われる。

“the research program I have described appears to make it quite clear that objective evidence, meeting the usual canons of rigorous scientific investigation, can be obtained as to the personality and behavioral changes brought about by psychotherapy.”

ロジャーズはこの研究のセラピープロセス研究の方法論的な発展に大変な自信を持っており、この手法の適用がパーソナリティ変化の研究に新たな展望を開くだろうとしています。

On Becoming a Person On Becoming a Person
Carl R. Rogers

Robinson Publishing
売り上げランキング : 35921

Amazonで詳しく見る by AZlink

松下 弓月

About The Author

松下弓月(まつしたゆづき)。たい焼きと映画とコーヒーと。最近は餃子が盛り上がっています。

No Comments

Leave A Reply

You must be logged in to post a comment.