マーティン・スコセッシ『ヒューゴの不思議な発明』を観た!

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あらすじ:父親を事故で亡くしたヒューゴ・カブレ(エイサ・バターフィールド)は、パリ・モンパルナス駅の時計台に隠れてたったひとりで暮らしていた。ある日、父親の遺した機械人形を修理するため部品を盗ろうと駅のおもちゃ屋へ行くが、店の主人パパ・ジョルジュ(ベン・キングズレー)に捕まり、父のノートを取り上げられてしまう。パパ・ジョルジュの養女・イザベラ(クロエ・グレース・モレッツ)の協力を得て、ヒューゴはノートを返してもらう代わりに店で働き始めるのだが、父親の機械人形とノートが実はパパ・ジョルジュが封印した過去に関わるものだったことを発見する。

先日行われたアカデミー賞で視覚効果など5部門を受賞した本作。映画の日だったこともあり、公開初日の3月1日に観てきました。映画愛溢れる作品だということくらいしか知らずに行ったのですが、3Dを生かした素晴らしいオープニングであっという間に引き込まれ、映画の始まりに関する映画だったのか!と驚きつつ、最後はもうなんだかわからないけどボロボロ涙が溢れて止まらないような有様でした。

オープニングは雪の舞い散る美しいパリに始まり、カメラがそのままモンパルナス駅へ飛び込んでいくかと思うと、蒸気を吐き出す列車の合間を縫い乗り降りする人々の脇をすり抜け、壁を超え巨大な歯車や機械で一杯の駅内部を駆け抜けるヒューゴを追い、一気に時計台のてっぺんへ。このシーンの1バージョンだけでもレンダリング17万1,015時間かかったというだけあって、実に精巧で見事な映像です(参考:WIRED.jp「マシンパワーを駆使、『ヒューゴの不思議な発明』の視覚効果」)。

とても感動はしましたが、気になるところないわけではありませんでした。一番はヒューゴの気持ちの動きです。最初は父親が遺したメッセージがあるはずだと人形を直そうとしていましたが、それがパパ・ジョルジュことジョルジュ・メリエスの作ったものだとわかってからは、彼の父親への気持ちはどうなったのでしょうか? 物語の中心がメリエスと映画の関係に傾いていき、ヒューゴと父親の関係についてはなんとなく済まされてしまったような感じがします。

あと、サシャ・バロン・コーエン演じる戦争で片足を怪我した鉄道公安官の話は、少し都合の良すぎるように感じました。孤児院で育てられたため、人間らしさを失ってしまったという設定なのですが、無理やり子どもを孤児院送りにしていたのに、彼女ができて人間らしい心を取り戻しましたと言われても受け止めようがありません。彼と付き合い始めた花屋の女性にしても、必死で助けを求めるヒューゴを無視するし…。鉄道公安官が心の傷を克服したというのは目出度いことだとは思うものの、とても喜ぶ気にはなれません。

が、それはさておき、本作は鑑賞中ずっと「映画っていいよね!」と言われているような感じを受け、映画ファンとしては「いいですよね!」と全力で答えざるを得ない映画でした。お父さんに映画館に連れて行ってもらったヒューゴの思い出話や、映画を観てはいけないと言われているイザベルを連れてヒューゴたちが映画館に忍びこむシーン、そして映画に魅せられたメリエスが映画という夢を作ることに夢中になっていくところなど、スクリーンを観ながらひたすら映画の素晴らしさを一緒に称えているような気持ちになっていました。

忘れようとしてきた映画への愛を取り戻すメリエスの姿を観ていると、もう無条件にこの映画を肯定したくなってしまうのです。何百本も作った映画のすべてを捨ててしまった男が、長い長い時を経て再び自分が最も愛していたものたちと再び再会する。時代に合わなくなったからといって、自分の愛したものを自らの手で焼き捨て、忘れ去ろうとしたときの痛みはどれほどのものだったのか。そう考えると、一度はしてしまった自分の気持ちを踏みつけるような行為を、彼が再びすることがなくて本当に良かったと思いました。彼が好きなものを好きだと胸を張っているところを見て、涙が止まりませんでした。久しぶりに自分の映画のはじめりを告げたときの、喜々として手品師を演じる彼の顔はとても素敵でした。

作中で紹介されていた世界で最初に生まれた映画たちを観ながら、映画ってほんとに良いものだ、と思えただけでも、この映画を観た価値はありました。映画って素晴らしい。心底思います。映画好きの方には、ぜひ観ていただきたい作品でした。

【修正】リヨン駅としていたが、モンパルナス駅に修正した。両方の説があるようだが、作中ヒューゴの悪夢として描かれた列車事故はモンパルナス駅で実際に起きたものらしく、以前訪れた時の記憶でもモンパルナス駅と思われたため(参照:Gare Montparnasse – Wikipedia, the free encyclopedia)。(3/10)

松下 弓月

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松下弓月(まつしたゆづき)。たい焼きと映画とコーヒーと。最近は餃子が盛り上がっています。

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